
昨日の記事では、リスキリングとアップスキリングについて取り上げました。どちらも「新しいスキルを外から取り込む」アプローチでしたが、今日はその対極ともいえる、今ある仕事を内側から見つめ直す「ジョブ・クラフティング」という考え方を紹介したいと思います。
ジョブ・クラフティングとは
ジョブ・クラフティングとは、与えられた仕事の中身そのものは変えずに、働く人自身が仕事の捉え方や進め方、人との関わり方を主体的に工夫することで、仕事への意味づけややりがいを高めていく考え方です。アメリカの組織心理学者によって提唱された概念で、一般的に次の3つの側面から整理されます。
1. タスク・クラフティング
業務の手順や範囲を自分なりに調整することです。与えられたルーティン業務に独自の工夫を加えたり、得意な作業の比重を増やす形で担当範囲を微調整したりすることが当てはまります。
2. 関係性クラフティング
仕事を通じてどんな人とどう関わるかを見直すことです。普段あまり接点のない部署のメンバーと積極的に交流したり、逆に消耗してしまう人間関係から少し距離を置いたりすることが含まれます。
3. 認知クラフティング
仕事の意味づけそのものを捉え直すことです。たとえば単調に見える事務作業を「会社の信頼を支える基盤の仕事」と再解釈するなど、同じ業務内容でも意味の感じ方を変えることで、内側から動機づけを高めていきます。
リスキリング・アップスキリングとの違い
リスキリングやアップスキリングが「新しいスキルを身につけて、できることの幅を広げる」アプローチだとすれば、ジョブ・クラフティングは「今ある仕事をどう捉え、どう関わるかを変える」アプローチだといえます。
転職や学び直しのような大きな決断をしなくても、今日から小さく始められるのがジョブ・クラフティングの大きな特徴です。異動直後で仕事にまだ馴染めない方や、長く同じ業務を続けてマンネリを感じている方にとって、無理なく取り組める選択肢になります。
相談現場での活用イメージ
キャリア相談の現場では、次のような声をよく耳にします。
- 「今の仕事にやりがいを感じられない」
- 「異動したばかりで自分の役割がしっくりこない」
- 「転職するほどではないが、このままでいいのか迷っている」
こうした相談に対して、いきなり転職やスキルアップを提案するのではなく、まず「今の業務の中で、自分が裁量を持てる部分はどこか」「日々の関わり方を少し変えられそうな相手はいないか」「この仕事を別の角度から見るとどんな意味があるか」といった問いを一緒に考えていくことで、相談者自身が小さな変化のきっかけを見つけられることがあります。
特に認知クラフティングを促す問いかけは効果的です。「この仕事は、誰の役に立っていますか」「この仕事がなくなったら、周りはどう困りますか」といった質問は、業務内容を変えずに意味づけだけを更新する助けになります。
まとめ
ジョブ・クラフティングは、大きな決断を必要とせず、今いる場所から始められるキャリアの工夫です。リスキリングやアップスキリングで「できること」を広げる視点と、ジョブ・クラフティングで「今の仕事の意味」を見直す視点を両方持っておくことで、キャリア支援の引き出しはより豊かになると感じています。