私たちは時に、過去の成功や築き上げてきた肩書、他者からの評価に執着しすぎて、自分の可能性を狭めてしまうことがあります。
そしてそれがもしかすると自分の人生をどんどんとややこしくしている理由だったり。
コーチングの世界では「未来志向」や「行動」が重要だとされますが、その一歩を踏み出すことを妨げているのは、実は私たち自身の「執着」です。
今回は「執着」をテーマに少し書きたいと思います。
執着とは、今あるものを手放すことへの恐れです。
それは物質的なものだけでなく、「過去の自分」や「他人からの評価」といった目に見えないものにも強く表れます。
私の場合もそうでした。
ある程度の成果を出してきた経験や、周囲からの信頼、仕事での地位。
それらを失うことが怖くて、新しい挑戦にブレーキをかけている自分がいました。
やりたいことが違うかもと感じつつもまさに執着していました。
そしてそれに執着する裏側には、新しいことに飛び込むことで、もし失敗したら?
という劣等感、自分の価値が下がるように感じ、何より「恥ずかしい」という感情がありました。
私はそれを避けたくて、どこか安全圏から出ないようにしていたのかもしれません。
さらにこの「恥」という感情、「他者からどう見られるか」の奥にもう一つの感情がありました。
そのもっと深いところには「孤独への恐れ」です。
自分が信じていた価値観やステータスが崩れたら、周囲の人たちとの関係性も変わってしまうのではないか。
評価を失えば、人とのつながりも失うのではないか。
そんな不安が、自分の中に根深くあったのです。
「劣等感」と「孤独」を味わいたくない。
それがゆえに今の状態への執着が生まれていることに気づく。
ここまで自分の感情を理解できる、認めると気持ちはだいぶ楽になれます。
ではこれをどのように解放していくか。
私がカウンセリングやコーチングで学んだのは自己開示です。
この「自己開示」することで少しずつ変化を起こすことができます。
勇気を出して、自分の弱さや迷いを言葉にしてみる。
思い切って、「実は今、こんなことが怖いんです」と話してみる。
ただ、この自己開示ができない。
それができればどれだけ楽かくらいわかっている。
でもそれができない。
きっとそう感じる人も多いはず。
「わかるよ、私もそうだよ」
「そんなふうに感じてたんだね」
「むしろ、話してくれてありがとう」
そんな言葉が返ってくれば嬉しいけど、そうなる気がしない。
自分のことを話せない理由の一つは「否定される」「拒絶される」という恐怖感もありますよね。
それをいきなり今の友人関係や、職場の人間関係で始めるのは怖いですね。
ならまずカウンセラーやコーチと話をしてみてください。
大事なのはまず自分の心の承認のバケツをいっぱいにすることです。
そうすれば自己開示の勇気も湧いてきます。
きっと、承認のバケツが空っぽに近い人は、カウンセラーやコーチ、他者から承認された時、心のどこかでそれはカウンセラーだがらそう言ってくれるんだ、コーチだからポジティブに返してくれるだけだという感情になるかもしれません。
でもいいんです。
それでいいです。
わざとらしいと感じていても、承認されることをまずは意識的に続けてください。
もし、他者に話す気持ちにすらなれないなら自分に嘘でもいいので「いいね」って言ってあげる。
いきなり思う相手から承認されることを求めすぎるので傷つくこともあります。
そしてそれが執着にもなりうるのです。
自分は思っている以上に承認されていると感じることができるようになると、
自己開示も勇気を出してできるようになり、想像していたより人は優しいと気づくことができます。
そこから、少しずつ「執着」を手放すことができるようになってきます。
完璧じゃなくても、弱さを見せても、ちゃんとつながれる。
むしろ、弱さを見せたからこそ生まれる信頼もあるんだと気づくかもしれません。
もちろん、「恐れ」が完全になくなることはないです。
それが本能的な正常な感情反応だからです。
でも、その恐れに飲み込まれそうになったとき、私は自分に問いかけるようにしています。
「何をそんなに守ろうとしてるの?」
「本当に、手放したら全部なくなる?」
「今の自分でも、大切な人はそばにいてくれるかもしれないよ?」
こうして自分と対話しながら、少しずつ執着の手をゆるめていくことが、私の中で「新しい信頼」を育てるプロセスになっています。
コーチングの現場でも、クライアントが行動できない背景には、こうした“見えない感情の根っこ”が潜んでいることがよくあります。
その根っこに優しく気づき、言葉にすること。
そして、自分を少しずつ開いていくこと。
そこにこそ、本当の変化の入り口があるのかもしれません。
「執着を手放す」とは、何かを失うことではなく、
本当の意味で自分自身を取り戻すことなのかもしれない──
今、そんなことを感じながら日々を過ごしています。
あなたがいま、手放したい“執着”は何ですか?
本日もお読み頂きましてありがとうございました。